こんにちは。「大腸がん日記」の運営者です。
抗がん剤前の血液検査&尿検査ってありますよね。
おおよその結果は体調によって何となく予想できますが、それでも結果は気になるもので・・・
わたしの場合は、血液検査の前日は眠れないくらい緊張します。
注射嫌い・・・という理由もありますが。
採血を終えてから診察室に呼ばれるまでの間は、そもそも待ち時間が長くてがん患者にはキツイし、抗がん剤が出来る/出来ないでは今後の一週間のみならず治療方針も変わってくるので、まるで運命の分かれ道のような気分です。
しかし、何度か経験を重ねて医師の説明を繰り返し聞くうちに、これらの数値が「今の自分の身体の状態を客観的に教えてくれる、大切な道しるべ」なのだと理解できるようになりました。
この記事では、私が実際に抗がん剤治療を受けている最中の血液検査結果の推移を公開し、それぞれの項目が何を意味するのか、そして、その数値を基に医師がどのように判断しているのかを、私自身の経験と学びを交えながら解説していきたいと思います。
私の血液検査結果の推移
以下が、私の実際の血液検査データ(抜粋)になります。
対象臓器 | 検査項目 | 3/27 | 4/1 | 4/16 | 4/24 | 5/13 | 5/27 | 6/10 | 6/17 | 6/21 | 7/1 | 7/15 | 7/29 | 8/12 |
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総合 | 総蛋白:6.5~ 8.2 血液中に含まれるタンパク質の総量です。栄養状態や肝臓・腎臓の機能などと関連があります。 | 6.7 | 6.0 | 6.1 | 6.4 | 6.6 | 6.8 | 6.1 | 6.6 | 6.4 | 6.4 | 6.3 | 6.1 | 6.2 |
アルブミン:3.8~ 5.3 肝臓で作られる血液たんぱく質。値が低い場合は、栄養不足、肝臓や腎臓の疾患、炎症性疾患などが疑われます。 | 4.2 | 3.8 | 3.6 | 3.9 | 4.1 | 4.3 | 3.8 | 4.1 | 4.1 | 4.1 | 4.0 | 3.8 | 3.7 | |
免疫 | 白血球数:3800~9300 免疫機能に関わる白血球の数。白血球数が増加している場合、感染症や炎症、ストレス、喫煙などが原因として考えられます。逆に減少している場合は、ウイルス感染症、再生不良性貧血、膠原病などが疑われます。 | 9110 | 6750 | 8150 | 4440 | 5070 | 3330 | 3910 | 4020 | 4940 | 4030 | 4410 | 4000 | 4470 |
Meut(5)(%) 白血球の中の好中球の割合。 | 69 | 69 | 81 | 63 | 55 | 49 | 51 | 37 | 62 | 52 | 48 | 51 | 50 | |
好中球数 白血球数 x Neut5(%) = 好中球数。1000以上なら抗がん剤を継続投与できる。 | 6285 | 4657 | 6601 | 2797 | 2788 | 1631 | 1994 | 1487 | 3062 | 2095 | 2116 | 2040 | 2235 | |
肝臓 | 総ビリルビン:0.2~ 1.0 赤血球が分解される際にできる色素で、肝臓で処理され胆汁として排泄されます。肝臓の機能低下や胆道の閉塞があると高値になり黄疸の原因となります。 | 0.8 | 1.3 | 0.5 | 0.8 | 0.5 | 0.7 | 0.5 | 0.6 | 1.4 | 0.7 | 0.4 | 0.6 | 0.8 |
直接ビリルビン:0.0~ 0.4 肝臓で処理されたビリルビン。 | 0.3 | 0.2 | 0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | |||||
AST (GOT):7~ 38 肝臓の細胞に含まれる酵素で、肝細胞が壊れると血液中に流れ出し数値が上昇します。肝炎や脂肪肝などで高値になります。 | 51 | 42 | 55 | 53 | 29 | 28 | 28 | 27 | 24 | 30 | 35 | 38 | 42 | |
ALT (GPT):4~ 44 AST、ALTを見ることで、抗がん剤の副作用を抑制できているのか?をチェック。もし数値が上がる場合は体内への蓄積を考慮して薬の量を調整する。 | 156 | 39 | 49 | 42 | 19 | 16 | 17 | 18 | 18 | 17 | 21 | 19 | 25 | |
LDH:120~ 245 体内で糖がエネルギーに変わる代謝経路に関わる酵素。高値の場合、肝臓(肝炎、肝硬変、がんなど)、心臓、血液、腎臓、肺、骨格筋の損傷など、幅広い疾患の可能性が考えられます。 | 649 | 606 | 717 | 700 | 267 | 227 | 226 | 230 | 187 | 248 | 254 | 267 | 277 | |
ALP:38~ 113 臓、骨、腎臓、小腸などに存在する酵素です。肝臓や胆道の病気、骨の病気などで上昇することがあります。 | 156 | 126 | 147 | 139 | 128 | 127 | 111 | 120 | 104 | 113 | 138 | 125 | 118 | |
γ-GTP:6~ 64 肝臓や胆道に多く存在する酵素です。アルコールの影響や胆汁の流れが悪くなると 高値を示すことが多い項目です。 | 161 | 156 | 146 | 171 | 66 | 44 | 28 | 30 | 28 | 26 | 27 | 23 | 24 | |
腎臓 | BUN:8~20 血液中の尿素に含まれる窒素の量。機能低下で値が高くなります。 | 10.0 | 11.9 | 10.6 | 11.9 | 15.0 | 13.9 | 11.1 | 16.0 | 14.7 | 12.8 | 12.1 | 11.4 | 10.0 |
クレアチニン:0.4~1.1 筋肉の老廃物。機能低下で値が高くなります。 | 0.90 | 0.86 | 0.86 | 0.84 | 0.94 | 0.86 | 0.86 | 0.81 | 0.79 | 0.91 | 0.82 | 0.89 | 0.96 | |
筋肉 | CPK:22~ 222 筋肉細胞がエネルギーを作り出す際に重要な働きをする酵素です。 筋肉やこれらの臓器の細胞が障害を受けると、CPKが血液中に流れ出して数値が上昇します。 | 199 | 152 | 183 | 120 | 221 | 231 | 214 | 257 | 85 | 283 | 276 | 358 | 306 |
脂質 | 総コレステロール:130~ 220 血液中のコレステロールの総量です。 | 283 | 268 | 183 | 169 | 159 | 204 | 232 | 191 | 174 | 167 | 175 | ||
膵臓 | アミラーゼ:~ 130 糖質(でんぷん)を分解する消化酵素の一つです。膵臓と唾液腺から分泌される。 | 58 | 61 | 86 | 73 | 102 | 107 | 98 | 118 | 102 | 113 | 111 | 134 | 131 |
血糖:65~ 109 | 106 | 101 | 127 | 86 | 98 | 83 | 89 | 94 | 82 | 122 | 96 | 93 | 93 | |
炎症 | CRP:0.0~ 0.3 体内に炎症や組織の破壊がある場合に増加するタンパク質。感染症やリウマチなどの病気で高値になります。 | 0.4 | 0.6 | 0.8 | 0.3 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.1 | 0.1 | 0.2 |
ミネラル | Na:135~ 148 ナトリウム | 137 | 139 | 139 | 139 | 143 | 142 | 143 | 142 | 142 | 143 | 143 | 141 | 146 |
K:3.5~ 5.0 カリウム | 4.4 | 4.0 | 3.8 | 4.0 | 4.0 | 4.2 | 4.0 | 4.0 | 3.9 | 4.0 | 3.7 | 4.1 | ||
Mg:1.7~2.6 マグネシウム。抗がん剤の副作用で減る傾向があり肌が荒れやすくなる。 | 2.3 | 2.5 | 2.3 | 2.2 | 2.6 | 2.1 | 2.1 | 2.2 | ||||||
腫瘍 マーカ | CEA:0.0~5.0 消化器の粘膜などを作るために活発に作られるタンパク質 | 2223 | 762 | 178 | 68 | 18 |
※基準値は検査機関によって異なります。あくまで一例としてご覧ください。
最重要指標!好中球(Neutro)とは?
さて、ここまで主要な3つの血球を見てきましたが、実は抗がん剤治療の可否を判断する上で、医師が特に注視している項目があります。それが「好中球(Neutro)」です。
好中球は、白血球の成分の半分以上を占める、いわば白血球軍の中のエリート部隊・最前線で戦う兵士です。細菌などを真っ先に見つけて殺菌する、非常に重要な役割を担っています。
そのため、好中球の数が極端に減る(好中球減少症)と、通常なら問題にならないような弱い細菌にも感染し、時には命に関わるような重い感染症(敗血症など)を引き起こす危険性が高まります。
私の主治医は、毎回の血液検査の際に、必ずこの数値を指差してこう言いました。
「大丈夫ですね。好中球が1000あれば、次の抗がん剤治療に進めます。1000を切ってしまうと、感染症のリスクが高くなるので抗がん剤はお休みして回復を待つことになります」
この「好中球1000/μL」というラインが、治療を継続できるかどうかの、一つの大きな目安でした。
私のデータを見ると、治療開始前の3月には6000/μLあった好中球ですが、6月には1487μLまで下がっていてほぼ最低ラインだったことがわかります。これ以上下がっていれば、続けられない可能性がありました。
標準治療ではこのように詳細にデータを確認しながら進めるので安心です。
医師の診断に学ぶ「木を見て森も見る」視点
検査結果の紙を前に、私はつい個々の数字の上下に一喜一憂してしまいます。しかし、医師はそれらの個々の数字(木)を見つつ、もっと大きな視点で全体を立体的に見ています。
たとえいくつかの数値が基準値を下回っていても、その下がり方が予測の範囲内であったり、回復の兆しが見えたりすれば医師は「順調」と判断します。
例えば、わたしは炎症数値であるCRPが再上昇しているのが気になりましたけど、主治医に確認してもらったところ、「全然問題ないですよ!」とのこと。
そして血液検査のデータだけでなく、私の食欲が変わらないことや体重の若干の増加、副作用が比較的軽めなことなどを総合的に見て、「治療がうまく進んでいる」と評価してくれました。
やはり素人判断はあてになりませんので、医師の診断を受けながらきちんと治療を進めることが大事だと改めて実感しました。現在何かしらの症状がある方は、自己診断で終わらせずに医師の診察を受けましょう。
まとめ
血液検査は、抗がん剤治療という暗いトンネルの中の状況を的確に照らしてくれるヘッドライトのようなものです。身体の状態を客観的に示し、「進め」「注意せよ」「少し休め」と教えてくれるような感じがします。
最初はただの数字の羅列にしか見えませんでしたが、医師や看護師に教えていただいたことで、自分の身体の理解が確実に深まりました。
例えば、白血球や好中球が下がれば免疫力の低下が疑われるので、マスクや手洗い、うがいをしっかりして感染対策に気を付けよう!という具合です。
このように、検査結果を確実に自分の行動につなげることで、私たちはより主体的に、そして前向きに治療と向き合えます。
これから検査を控えている方も、どうか数字の一つ一つに過度に一喜一憂しないでください。それはあなたの身体からの大切なお知らせです。その声に耳を傾け、信頼できる医療チームと共に、一歩一歩、着実に治療の道を進んでいきましょう。