こんにちは。「大腸がん日記」の運営者です。
がんの告知を受けたとき、自分の体のこと、治療のこと、将来のこと…様々な不安が一気に押し寄せます。しかし、それと同じくらい、いや、それ以上に私の心を重く支配したのは、「この事実を、子どもたちにどう伝えるべきか」という問題でした。
筆者心配をかけたくないし、ショックも受けさせたくない
そんな思いが頭の中をぐるぐると巡り、なかなか言葉にすることができませんでした。
しかし、我が家の場合、子どもたちはすでに24歳と18歳になっています。一人の自立した大人として、また、社会に一歩踏み出した若者として、それぞれの人生を歩み始めています。
悩んだ末に「すべてを話そう!」と決めました。
この記事では、私がなぜ子どもたちに、ステージ4であることも含めてすべてを隠さずに伝えることを選んだのか、そして、その選択が結果として、私たち家族に何をもたらしたのかについて、ありのままにお話ししたいと思います。今、同じように悩んでいる親御さんにとって、何かのヒントになれば幸いです。
なぜ「正直に話す」ことを選んだのか
子どもにがんを伝える際、その子の年齢や性格によって、伝え方は大きく変わってくると思います。もし、子どもたちがまだ小学生や中学生だったら、私は伝えたかどうか、かなり悩んだと思います。
しかし、我が家の子どもたちは、もう分別のある大人です。私が直面している現実を、きちんと受け止め、理解できる年齢に達していました。その上で、私が「正直に話す」ことを選んだ理由は、大きく3つあります。
- 1.嘘や隠し事は、いずれ信頼関係を壊すと思ったから
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「そんなに重くないから大丈夫だよ」と伝えたら、一時的に安心させることはできたかもしれません。しかし、治療が長引いたり、副作用で苦しむ姿を見せたりする中で、いずれ子どもたちは「何かがおかしい」と当然気づくはず。
その時「なぜ本当のことを言ってくれなかったのか」という疑問と不信感が、家族の間に生まれてしまうのではないか?と考えました。家族という一番小さな社会の単位において、誠実さと信頼は何よりも優先されるべきだと私は信じています。
- 2.子どもたちを「対等な大人」として尊重したかったから
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彼らはもう、親がすべてを背負って守ってあげるべき存在ではありません。一人の人間として、親が現実世界で直面している困難を知り、それに対して自分たちがどう関わるべきかを、自分で判断する権利と責任があります。彼らと対等な立場で情報を共有することが、彼らの人格を尊重することにつながると考えました。
- 3.「ワンチーム」として、共に乗り越えたかったから
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結局のところ、がんは、私一人だけでは戦えません。家族の協力が何より大事です。副作用で「これまで通り」が不可能なことも出てくるでしょう。これから始まる長い治療の道のりを、家族全員が同じ情報を共有し、同じ方向を向いて支え合う仲間として戦いたい・・・そのためにも、正直にありのままを伝える必要がありました。
告知の日。リビングでの家族会議
わたしの場合は、検査後に即入院となり当日は子どもたちには会えませんでした。帰宅した妻には「ガンが見つかって入院」とだけ伝えてもらいました。
当時は便秘以外にこれといった症状はなかったし、翌日から楽しみにしていた旅行が控えていたので、暗い気持ちになって欲しくなかったのです。もちろん「ガン」という言葉は重いですが、深刻な話としてではなく明るく伝えてもらいました。
入院中も笑顔のスクショを撮って送ったり、いつも通りのコミュニケーションをとっていました。送られてくる旅行中の写真も笑顔でホッとしました。
最初のうちは副作用もほとんどなくて、いつも通りに自転車こいだりしてたので、子どもたちもそんなに心配はしていなかったように思います。抗がん剤治療というものがどういうものか、私自身もよくわかっていなかったし、どう伝えていいかもよく分からなかった、というのもあります。
ただ繰り返し入院する必要があると分かった時点でこれは長期戦になることを理解し、家族で正確な情報を共有すべきだと判断して伝えました。



CT画像チェックしたら転移してるって言われたよ、ステージ4らしい
「えっ?」という驚きが一瞬見えた気がしました。



これから繰り返し入院することになる
あまり詳しくは追及してこない子どもたち。こちらの話す辛さをくみ取ってくれたようです。ああ、もう大人なんだな、と胸が熱くなるのを感じました。
想像とは少し違う反応に戸惑いましたけど、彼らの心の中も穏やかでなかったことは、その表情から伝わってきました。



これはわたしの戦いであり、
私がしっかりと向き合って生きていくべき問題なのだ
伝えたことによって、私自身がより深く理解しました。
告知後の子どもたちの驚くべき変化と成長
私が正直に話したことで、子どもたちにはいくつかの驚くべき、そして頼もしい変化が見られました。
1. 病気について調べ、治療方針を一緒に考えてくれた
告知の後、子どもたちはそれぞれにAIを使って「がん」という病気について調べ始めたようでした。長男は、抗がん剤を受けるべきかどうか悩む私に、AIの回答を転送してきました。
おそらくステージ4の大腸がん患者の統計データや、余命についても検索したでしょう。令和のAI時代、「大丈夫だから」という安易な言葉はもう意味を成しません。何も隠すことは出来ません。
2. 自らの判断で「がん保険」に加入


娘は自らがん保険に加入しました。抗がん剤治療は保険適用とはいえ、高額になりがちです。家族に金銭的な心配をかけたくないと、がん保険に加入したようです。親である私ががんになったという事実から、何らかの教訓を学び取ってくれたのは嬉しいです。自らの人生のリスク管理をして行動につなげていました。
彼らが精神的にも経済的にも、完全に自立した大人であると感じました。子どもたちの主体的な姿勢は私にとって大きな驚きであり、同時に心強い支えとなりました。
3. 「病人扱い」しない優しさ。変わらない日常という宝物
私が最も感謝しているのは、子どもたちが、必要以上に私を「病人扱い」しないことです。
もちろん、体調が悪い時には「無理しないで」「何か手伝うことある?」と気遣ってくれます。しかし、それ以外は、これまでと何も変わらない日常が続いています。相変わらず、くだらないことで笑い合い、夕飯のメニューや週末の予定を話し合う。
もし彼らが、常に私を病人扱いし腫れ物に触るように接してきたら、私は「かわいそうな病人」という存在になるしかありません。それはあまりにも哀れです。子どもたちが「これまで通り」に接してくれることで、私は「がん患者」でありながらも「いつも通りの父親」でいられるのです。
この何があっても「変わらない日常」こそが、病気と闘う上で、どれほど貴重で、力になることか。彼らのその絶妙な距離感と優しさに、私は日々、救われています。
結論:正直に伝えて、本当によかった
振り返ってみて、私は子どもたちに正直に伝えたという選択は、間違いなく正しかったと断言できます。
もし、私が病状を軽く偽っていたら・・・
もし、私がステージ4であることを隠していたら・・・
子どもたちは、がんについて学び、がん保険に加入するということはしなかったかもしれません。 そして何より、「何か隠している」という不信感が、家族の間に見えない壁を作っていたかもしれません。
正直に話すことは、大きな勇気と覚悟を必要としますし、時には傷つくこともあるでしょう。でも、嘘偽りのない親の人生の現実を見て、そこから学ぶことが彼らの責任でもあります。何を学ぶのかは彼ら次第です。
もし、今、お子さんにがんのことをどう伝えるべきか悩んでいる方がいらっしゃれば、お子さんの年齢や性格を十分に考慮した上で、「正直に話す」という選択肢も、ぜひ考えてほしいと思います。それは、あなたのお子さんの強さと優しさを信じることであり、学びの場を提供することになるはずですから。






