こんにちは。「大腸がん日記」の運営者です。
がん治療と向き合う中で、多くの方が気になり、そして心を揺さぶられるものの一つに「腫瘍マーカー」の数値があるのではないでしょうか。
特に、血液検査でわかるCEA(がん胎児性抗原)は、大腸がんの治療効果を測る指標の一つとしてよく用いられます。検査の日が近づくと落ち着かなくなり、結果の紙に書かれた数字を見て、天にも昇る気持ちになったり、奈落の底に突き落とされたような気分になったり…。そんな経験をされている方も少なくないと思います。
何を隠そう、管理人のわたしがそうでした。
わたしのCEAは2223 ng/mLという、基準値をはるかに超えた絶望的なものでした。それが、治療の効果もあって最近の検査では18 ng/mLまで下がりました。
2223から18へ。
この数字だけを見れば、劇的な改善であり、手放しで喜びたいところです。もちろん、素直に嬉しかったのは事実です。でも同時に、私はこの数字に「一喜一憂しない」ように、と強く心に決めています。
なぜなら、主治医から繰り返し「腫瘍マーカーは、必ずしもがんの進行度合いを的確に表すものではありません。あくまで参考程度に捉えて、一喜一憂しないでくださいね」と言われ続けてきたからです。
この記事では、私自身の経験を踏まえながら、なぜ腫瘍マーカーの数値に一喜一憂すべきではないのか、そして、この「参考指標」とどう向き合っていけば心が少し楽になるのかについて、お話ししたいと思います。
そもそも、腫瘍マーカー「CEA」とは?
まず、私たちが向き合っているCEAとは何者なのか、簡単におさらいしておきましょう。
腫瘍マーカーとは、主にがん細胞によって作られるタンパク質などの物質で、がんの種類や臓器ごとに特徴があります。
がん情報センターより引用
腫瘍マーカーはがんの種類によって違うようです。
腫瘍マーカー検査は、さまざまながんで行うことがあります。がんの種類ごとの主な腫瘍マーカーは以下のとおりです(2024年6月時点)。
がん情報センターより引用
- 甲状腺がん:CEA
- 肺がん:CYFRA、CEA、ProGRP、NSE
- 食道がん:SCC、CEA
- 胃がん:CEA、CA19-9
- 大腸がん:CEA、CA19-9
- 肝臓がん(肝細胞がん):AFP、PIVKA-Ⅱ、AFP-L3分画
- 胆道がん:CA19-9、CEA
- 膵臓がん:CA19-9、SPan-1、DUPAN-2、CEA、CA50
- 腎盂・尿管がん: NMP22
- 膀胱がん:NMP22、BTA
- 前立腺がん:PSA
- 乳がん:CEA、CA15-3
- 子宮頸がん:SCC、CA125、CEA
- 卵巣がん:CA125
しかし、ここで非常に重要なポイントがあります。主治医によると
- がんがあってもCEAが上昇しないケースがある
- がんでなくてもCEAが上昇するケースがある
ので、一概に腫瘍マーカーが下がったからがんが縮小しているとか、腫瘍マーカーが上がったからがんが悪化したとか、そのような診断は出来ないということ。
国立がん研究センターの公式HP、がん情報センターには以下のように記載があります。
がんかどうかは、腫瘍マーカーの値だけでは診断できません。また、がんの進行や転移などの経過についても、腫瘍マーカーの値の変化だけでは判断できません。このため、がんの診断や、診断後の経過観察、治療の効果判定を行う場合には、画像検査や病理検査などその他の検査の結果も併せて、医師が総合的に判断します。
がん情報センターより引用
例えば、喫煙者の方は非喫煙者よりもCEAの数値が高い傾向にありますし、肝炎や膵炎、糖尿病などの良性の疾患でも数値が上がることがあるようです。
私の体験談:CEA 2223から68への道のりと医師の言葉
私の闘病生活においては、CEAの数値はまさしくジェットコースターのように急降下しています。だからと言ってがんが縮小しているということにはなりません。
絶望の「2223」という数字
がんの告知を受け、最初の血液検査の結果を見たときの衝撃は今でも忘れられません。検査結果の紙には「CEA 2223 ng/mL」という数字が印字されていました(基準値は一般的に5.0 ng/mL以下です)。
一瞬ですが、頭が真っ白になり、目の前が真っ暗になりました。何度見ても2223で間違いない。それは基準値の400倍超。
これはもう末期で、助からないのではないか?
そんな私を見て、主治医は冷静に言いました。
「○○さん、正直に言います。すぐにでも抗がん剤治療を始めた方がいいですよ。今すぐに手を打たなければ危険ですよ。」
なぜ「一喜一憂」してはいけないのか
抗がん剤治療を始めてからは、CEAの数値が面白いように下がり始めました。数百単位で下がり、あっという間に二桁台になり、そして最新の8月の結果では18まで下がりました。
わたしの中では「やった!」と大喜びなのですが、主治医はあくまで冷静です。
「順調に下がっていますね。良い傾向です。でも、これもあくまで参考値ですよ。忘れないでくださいね。」
主治医がなぜこれほどまでに「一喜一憂するな」と繰り返すのか。その理由は結局のところ「腫瘍マーカーはひとつの参考値」であり診断の確定材料にはならないこと、そして「画像診断が最も重要だ」ということなのです。
管理人のようにすでに肝臓やリンパに転移している状況では、大腸カメラで大腸の内部だけを個別に見ても意味がなく、転移先である肝臓やリンパの状態や大腸内の様子を確認し、体調と合わせて総合的に診断するには、やはりCT画像が最も正確に状況把握ができる医療データなのです。
腫瘍マーカーの数値は数週間に一度、目安として検査して、上昇しているのか下降しているのかを参考程度に見ているようです。
腫瘍マーカーと上手に付き合うための3つの心構え
最後に、私が実践している、腫瘍マーカーの数値に心を乱されないための3つの心構えをご紹介します。
1. 「数字」ではなく「傾向」を見る
数値が上がった下がったではなく、医師と同じように、より長い目線で「傾向(トレンド)」を見るようにしました。大きな流れで捉えることが大切です。
2. 主役は「自分の体調」と心得る
腫瘍マーカーの数値よりも大切なのは、あなた自身の体調です。痛みはどうか、食欲はあるか、元気に散歩ができるか。そうした日々の体感こそが、最も正直な健康のバロメーターです。
検査の数字が悪くても、体調が良ければ「よし、まだ大丈夫!」と思えます。自分の感覚を信じ、日々の生活を丁寧に過ごしましょう。
3. 不安は一人で抱え込まず、主治医や看護師にすぐに相談する
そうは言っても、悪い数字を見れば不安になるのが人間です。そんな時は、絶対に一人で抱え込まないでください。看護師や主治医に「すごく不安です」と正直に伝えましょう。
管理人も肌荒れや息苦しさ、胸やけなど気になることがあればすぐに相談しています。レントゲン画像やCT画像をすぐに確認してくれて、酸素濃度や血液検査の結果も見直してくれて「大丈夫ですよ」と言われることが多いです。
そして悪化した場合にはすぐにでも連絡をくださいと伝えられています。この親身な対応に管理人はすごく救われています。
まとめ
腫瘍マーカーCEAは、治療の経過を知る上で便利な数値に思えますが、それは絶対的な指標ではなく、あくまで補助的な「参考値」であることに注意が必要です。
管理人のCEAは2223から68まで下がりました。これは紛れもなく希望の光です。しかし、この数字に慢心することも、今後の変動に絶望することもしないと決めています。主治医からは腫瘍マーカー値は「一時的なもの」と伝えられています。
ダイエット中の体重と同じようなものでしょうか?
日々の体重計の数値に一喜一憂することなく、淡々と食事制限を続けることがダイエットの秘訣であるように、抗がん剤治療の腫瘍マーカーについても、淡々と治療を進めることが大事だと実感しています。
信頼できる医療チームと共に、一歩一歩、着実に治療の道を歩んでいきましょう。